2007年08月19日

完全学校週5日制  2002(H14)年3月19日 奈良新聞

主な記事
 ・形がい化の可能性も
 ・土曜日の取り組み進む
 ・独自の学力調査広がる
 ・増える社会人特別講師


教育 いま 未来        奈良新聞 2002.03.19



活性化の起爆剤となるか  完全学校週5日制

 
1.gif4月から国公立の小中高校で完全学校過5日制が始まる。これに合わせ
教科内容を削減し、ゆとりを重視するカリキュラムが導入される。
 学校が開かれた存在となり、地域の大人が子どもに経験や技術を教える
ことも期待されている。
5日制は学校や地域を活性化する起爆剤になるのか。周辺を探った。


教育改革の柱に
形がい化の可能性も


 学校週5日制は教育改革の柱として位置付けられ、段階的に進んできた。
自ら問題を見つけ、解決する力汐育てるには、ゆとりを持たせ、体験活動など子ども が主体的に行動できる時間を増やす必要があるという考え方が根底にある。
 しかし、完全実施を目前にして「学力低下」の不安を訴える声が高まり、現場には動揺もみえる。
 学校5日制はもともと、企業や官庁で週休2日制が広がったことに対応する形で検討が始まった。教職員組合が長年要求を続けていたことも、教員の労働条件改善という側面が強かったことを裏付ける。
 月1回の5日制は1992年9月にスタートした。旧文部省が知教室の教育を見直し「ゆとり」の必要性を強調し始めた時期と重なり、5日制は「ゆとりを確保するため」という意味付けだった。
 背景には、いじめの激化など、これまでの学校が子どもを息苦しくさせてきたことへの反省もあった。
 月1回の延長線上で95年4月から月2回に。栃木県黒磯市で起きた中学校教員刺殺など少年事件の続発を受けて文部省は98年2月、2003年度から実施予定だった完全5日制を1年早めることを決定した。
 しかし、完全5日制に対応して教科内容を3割削減する新学習指導要領が発表された98年終わりごろから風向きが変わる。「子どもの学力が下がる」と5日制のマイナスを指摘する声が出始めた。
 学力低下論の高まりをにらみ、私立の中高校はほぼ半数が完全5制を実施しない。授業時間を確保して、公立校との差異化を図る構えだ。
 公立校側にも危機感が高まり、東京都台東区などは土曜日に学校で補習をする「土曜学校」を開く。公立高でも同様の動きがあり、5日制が形がい化する可能性さえ出てきている。



土曜日の取り組み進む


 2.jpg完全5日制を受け、各地の自治体は、土曜日の子どもたちのために、多様な取り組みを始めている。
 ネギの特産地、埼玉県深谷市。昨春就任した蜂須栄教育長があちこちで聞いたのは「学力は低下しないか」という不安の声だった。
 校長退職者や父母の代表らで構成する「教育振興協議会」をスタートさせると、初会合では学力低下不安に加え「非行に走らないか」「共働き家庭への対応はどうする」といったマイナス面への懸念が相次いだ。
 新井家光市長が蜂須教育長に「自習を学校でやればいいだろう」と提案。それを受けてまとめたのが「5日制に対応して実施する10の事業」を意味する「510サポートプラン」だ。
 まず勉強。19の小中学校全校の図書館で毎週土曜日午前に「自習教室」を開く。中学では数学、英語、小学校は全教科が対象で、一校当たり60人程度の参加を見込む。授業形式ではなく、地域のボランティアが子どもたちの宿題や分からない部分などを一人ひとりに教えるようにする。
 夏休みにもほぼ毎日、自習教室を開く。小学生には親子英会話教室も用意。一方で田植えを手伝う農業体験や市民プールの開放もするや蜂須教育長は「勉強だけが注目されるが、休みが増えた子どものために、部活でも体験学習でも選択肢を増やすことが大事だ」と説明する。
 勉強に狙いを絞るのは東京都台東区。中学に「土曜スクール」を開校、一学級を20人編成にし、習熱度別に指導する。時間割を決め、教科書のほかドリルなども使う。
 先を見据えた政策が実を結んでいる自治体もある。
 京都市は「教育を地域が担うという意識は短時間では根付かない」と、月一回の週5日制になった1992年から、土曜休みに学校をボランティア中心の体験活動に開放、支援してきた。今では西陣織やお茶といった京都ならではの伝統文化に触れるなど、700種類を超える活動が各校で展開されている。
 だが那覇市のように具体的な計画策定が進んでいない自治体もあり、「子どもの土曜日」をめぐり、自治体の模索が続きそうだ。


独自の学力調査広がる
 学力低下への懸念を背景に、自治体が独自の視点で取り組む「学力調査」が注目され始めた。教育の地方分権の流れもこうした動きを活発化させている。
 「教員は調査結果をみて自らの指導の在り方をしっかり反省してほしい」
 中学三年を除く市立小中学校の子ども全員を対象に2月、「学習内容定着度調査」を初めて実施した静岡県浜松市の土屋勲教育長は、徹底した授業改善が狙いだと強調した。
 基礎を理解していれば百点が取れる設問だったが、正答率は全教科平均で小学校約80%、中学約70%。国語で「文章問題はまずまず。漢字は読めるが書けない」などの傾向が分かった。
 土屋教育長は二、三年後をめどに、各校ごとの得点を含めた調査結果を公表する考えだ。公表することで各校に指導の弱点を克服するよう促し、保護者には新たな学力観を理解してもらうことを狙う。
 文部科学省によると、昨年6月現在、都道府県単位で「学習状況調査」などを実施していたのは1府12県。自治体独自の学力検査は広がっている。
 沖縄県教委は1988年度から達成度テストを実施している。古波蔵肇義務教育課長は「自ら課題を見つけ解決するという生きる力は大切だが、読み書き計算の徹底がこれからの方向」と強調する。
 栃木県は来年度以降、出題に一貫性を持たせ、今年を起点に成績の変化をみることができるようにする。
 文科省教育課程課は「自治体が問題を工夫し、学力が定着するよう指導法の見直しを図ってほしい」としている。



増える社会人特別講師


 4月からは地域の社会人が「総合的な学習の時間(総合学習)」などに教室で「特別非常勤講師」として教えたり、学校が休みの土曜日に体験活動を指導したりする場面が増える。
 こうした機会を生かし、自分の学んできた知識や技術を子どもたちに伝えたいと望む人の中に、社会人講師の民間資格「キャリアコミュニケーター」の認定を受ける人が増えている。
 資格を取得した一人、貞子ネルソンさんは、20年にわたる米国生活の間に実用色彩学を修得、1986年からホテル、テーマパーク、養護施設などの色彩計画や都市空間づくりにかかわってきた。
 「色彩には感性を高め、心を豊かに美しくする効果がある。色彩を学び、子どもの感性を磨き人間性を豊かにすれば、10年先、20年先の人生にきっと役に立つ」と信じている。
 「子どもだけでなく先生にも楽しめる授業にしたい」と話すのは情報通信関連会社に勤める国友健樹さん(22)。国友さんのテーマは環境問題だ。
 小さいころ虫取りに夢中になった。犬やカメも飼い、だんだんと環境の大切さを学んだという。
 学生時代はボランティアとして、動物園で子どもたちに動物との接し方、自然との共生を教えた。会社でも環境問題を担当する。
 今の子どもは自然に触れる機会が少ない。「最初のうち『動物は汚い、怖い』と嫌がるが、接しているうちに恐怖心が薄れ『目が優しい、温かい』と新たな発見をしていく」と国友さん。動物や自然とつながっているという意識が、環境への配慮も育てるという。
 キャリアコミュニケーター資格は、社会経験を積んだ民間人と学校をつなぐ制度で、 社団法人「ユースボウル・ジャパン」(東京)が企画、運営している。


学校5日制をめぐる年表
1986年  2月 東京の鹿川君がいじめを苦に自殺
      4月 臨時教育審議会が「社会のすう勢考慮し、学校の週5日制への移行を検討」と提言
1989年  12月 文部省が5日制実験校指定
1991年  3月 文部省が関心・意欲・態度重視の新学力観に転換
     12月 文部省の研究会議が92年度中に月1回の学校5日制導入を求める
1992年  5月 国家公務員の完全週休2日制開始
      9月 月1回の学校5日制開始1994年  11月 愛知の大河内君がいじめを苦に自殺、国会でも審議
1995年  4月 学校5日制が月2回に
1996年  7月 中教審が「ゆとりの中で生きる力の養成」を提唱
1997年  6月 神戸の連続児童殺傷事件で中学生逮捕
      7月 神戸の事件受け文相が「心の教育」を中教審に諮問
1998年  1月 栃木県で中学生が教師をナイフで刺殺
      2月 文部省が完全5日制の1年前倒し実施を決定
     11月 教科内容を3割削減する新学習指導要領発表
2000年  5月 愛知で主婦刺殺、バスジャック事件など「17歳」の
      犯罪続発
2002年  4月 完全学校5日制スタート
   
posted by 奈良県PTA at 10:15| 教育問題切り抜きBOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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